③入会(コミュニケーション編)

初めの2ヶ月は気を引き締める

めでたく生徒さんが入会し、さっそくレッスンが始まるわけですが、大事なのは始めの2ヶ月くらいでしょうか。

何が大事かというと、この間に生徒さんに自分のレッスンに慣れてもらって、レッスンが先生の予定通りに進められるように軌道に乗せる時期だからです。

最初は、お互いに緊張感もあり、生徒さんは浮き足だってる状態でもあります。

生徒さんにとって、これまでの生活に、「楽器を習う」という「習慣」が加わるわけです。

生徒さんのご家庭に、「音楽教室に通わせている」という認識、生徒さんには、「おうちでいつも楽器を弾く」という新しい日常に変化していくのを、先生がその手助けをしなくてはいけません。

 

チェックポイント1

まず、「レッスンに通う」ということ。または出張レッスンでは「先生を迎える」ということ

・時間はきちんと守って来てくれているか

・テキストを忘れずに持たせてくれているか

・準備してほしいものをすぐに用意してくれるか

 

出張レッスンの場合は、

・先生が来るまでレッスンを受ける体制が整っているか

・先生をお迎えするという意識を持ってくださっているか

・あいさつやお行儀ができているか(できなければ徐々に浸透させてきます)


など、親御さんの反応のよさというのをチェックします。色鉛筆や筆記用具などのテキスト以外の持ち物を、翌週に忘れてしまうと、さらに翌週まで待つことになってレッスンが進まないことになったりします。

 

忘れ物問題

一週間っていう期間というのは、よくも悪くもほどよい長さで、一週延びると、人間の義務感はだんだん薄れていきます。

忘れ物があると、あー来週も持ってこない可能性大だ…となるわけです(笑

だから入会してすぐ、必要なもの、レッスンで忘れてはいけないものを保護者の方に直接お話して、初めから「うっかり」を防ぐようにしましょう。

「今日は、色鉛筆を使って音符を書きました」

など、レッスン終わりで、お母さんにお伝えするのも効果的です。

レッスンがあること自体を忘れて来ない、ということもたまに発生します。新しい習い事が家族のスケジュールに追加されたことで、「うっかり」ピアノの曜日をスルーしてしまった、という場合ですね^^;


あらかじめ緊急連絡先を聞いておいて、「今日、レッスンでお待ちしているんですが、どうかされましたか?」とお電話を入れます。(何か突発的なことが起こった場合に、入会時に必ず連絡が取れる連絡先を聞いておきましょう)

びっくりすることに、翌週もその翌週も忘れる方がいます(汗)最初はこまめに必ずお電話してレッスンに通うというスタイルに慣れていただきましょう。

 

お家の方のレッスンの関わり方

PLMでは、コミュニケーションの大切さを折りに触れて書いておりますが、入会直後というのもとても大事です。

習い始めで、生徒さんがまだ小さい場合、1人でおうちで練習することはできません。親御さんのサポートが必要で、練習につきあっていただくことが大事です。

驚くほど何をどうすればいいかわからない親御さんもいらっしゃいます。極端な例をご紹介します。本当にいらした生徒さんです。

レッスンに来て、生徒さんに「弾いてみた?」と聞いたら、「わかんない」という返事。心がまっすぐな可愛い女の子。素で「わかんない」と言っているのがまた気の毒で(笑

入会早々だったので、おぉ、これは文字通りピアノ教室に毎週連れて来てるだけなんだな、これはいかん、と思い、対策を練りました。

LINEでお母様に、小さくてもピアノ教室のレッスンだけでは弾けるようにはならないこと、おうちで弾くから弾くための筋力もついて、弾き方を覚えていくので、毎日ピアノのテキストを開いて一緒に練習をつきあってあげてほしいことを伝えました。そして、宿題の曲(最初は楽譜のスクショを送ってました)と練習方法を毎週連絡するようにしました。

生徒さんには、おうちに帰ったら、どのテキストを開いて、どこの曲をどう練習してくるかを、付箋やシールなどを貼って教え、おうちに帰ったらどのテキストから出して、宿題の曲を自分で開くところまで練習させました。

もちろん、生徒さんがきゃっきゃと何回もやりたくなるような話術でもって誘導しました(笑)おままごとをやるような感覚でやるとノリノリでテキストを何回も開いてくれます。

そして、レッスンにきたらどのテキストから出すかも生徒さんにやらせてみます。ひとりでできるようになることを覚えると、レッスンに通ってピアノを弾く、という意識も芽生えるためです。

宿題の曲は自分で開けるように教えてあるので、練習のお付き合いお願いしますとお母様へお伝えしました。

 

続いて、レッスンで、ある曲の弾き方を教えた後、おうちに帰って弾き方を忘れちゃわないように、動画を撮ってあげました。生徒さんが帰った後、その動画にテキストを入れて編集し、お母様に送ります。

動画のスクショです。見せたらわかるだろう、と思ったんです。そのくらい不安なお母様でした。

今日の宿題の曲は、こんなふうに弾けていればオッケーです。と添えて毎週送るようにしました。お返事があってもなくても毎週の積み重ねのために1ヶ月以上は送っていたと思います。

そのうち、お母様も即レスしてくれるようになり、生徒さんが1人でテキストを出せるようになってきたのを見て、あぁちゃんとおうちで練習してもらっているなと安心しました。

そうしましたらしばらくたって、お母様がレッスンを見学にいらっしゃいました。

私はびっくりしました。入会当初は、いいお母様なのだけど、習わせるということにぴんときていないような、つかみどころがないような印象だったので、ご自分から見に来てくださったことが嬉しかったんです。

そして、レッスンを見学しながら、

「ピアノを弾くだけじゃなくて、こういうことも教えてくださっていたんですね。こんなこともできるようになっているなんてすごいですねー。娘が、先生がやさしく教えてくれて楽しいといつも言っていてー^^ありがとうございます」と言ってくださいました。

動画を撮る時も、お母さんが「私が撮りましょう」と積極的に引き受けてくださって、あぁすごく意識が変わられたなぁと嬉しくなりました。

生徒さんも、どんどん弾けるようになってきて、宿題を連絡しなくても大丈夫になりました。

中には、平たく言うといい加減なお母様もいます。口では「やらせます!」って言うんですが、伴わないという(笑)ですが、このお母様は、本当に少しずつご理解いただいて、お子さんのために一生懸命やってくださる方でした。

私が一時大変な状況の時、お付き合いが浅いのに暖かい優しさを向けてくれるくらい心を開いてくださって、本当にありがたいと思いました。

このやり方は、私が若かったらやれていなかったと思います。こんなふうな良い関係を築く努力はしなかったかもしれません。見方によっては、ここまでしなきゃいけないの?!と思う事案です。

でも、感情的になると問題点を見失います。

何が問題で必要なことはなんなんだろう?と客観的に考え、行動できると、以前の自分にはなかった一面を発見することができて、生徒さんに成長させていただいた、という経験でした。

さて。次。

出張レッスンの場合は、先生が生徒さんのお宅に行くスタイルですから、生徒さんがちゃんとレッスンに集中できる環境作りに協力していただきます。

体験レッスン時などに、必要なもの(椅子とか、足台とかテーブルとかいろえんぴつとか)をお伝えしておきます。

そして、

自分のうちであっても先生が来たらそこはレッスン室になる


ということを、レッスンをしながら見せていく。

ピアノの椅子の座り方、お話しの聞き方、お遊びではなくっておけいこなんだっていうことを、先生の明るいオーラの中にも、それは見せられるようにしましょう。

お母さんによっては、まだ幼児ですとお子さんを自由に育てているんだなぁと、過保護っぽかったり、集中できなくても何も言わなかったり、という方もいらっしゃいます。

「あきちゃったのねー」と平気でおっしゃったり(汗)

それでも、レッスンではそれを注意するんじゃなくて、おりこうさんでいられる工夫、集中できるアイディアを翌週まで一生懸命考えていきます。

いくつかネタを用意して、まだ小さいから仕方ないと思わせないレッスンをします。間接的にお母さんにも学んでいただきたいと思ったんです。

お子さんもそこで初めて学ぶし、成長します。何よりも生徒さん本人が、「できた!」と実感してそれが自信になります。

あるとき、シールを貼るカードを作りました。

題して「おりこうさんカード」です。

ピアノががんばれたらシールを貼れるのはもちろんとして、ピアノにちゃんと座っていられるか、「疲れた」「飽きた」と言わないでやれるか、を「おりこうさん」ではかるんです(笑)

おりこうさんのシールをもらえると、どんどんおりこうさんでいようという意識になり、

前回より我が子がちゃんとレッスンを受けている!という姿に、お母さんも「小さいからしょうがないのではなく、ちゃんと教えればおけいこできる意識を持てるんだ」

と気づかれるようなんです。

それまでは、私が帰るときにもうお部屋で遊び始めた生徒さんが、レッスンをおりこうさんに受けられた自信から、私が帰る時にお見送りに出てきてくれるようになり、その翌週には、玄関先で私が来るのを待っていていくれるようになりました^^

生徒さん自身もおけいこをするという自覚が小さいながら芽生えて、自信に満ち溢れているから待っていてくれるんだと思います。

本当に最初の2ヶ月。ここは何がなんでも生徒さんに全力でレッスンを軌道に乗せましょう。ピアノ自体が上手かどうかは問題ではありません。

レッスンを受ける、ということを理解してもらう、ということが目的です。

 

いろんなご家庭に行ってきましたから、エピソードは山のようにあります(笑)

そこから学んだコミュニケーション術は、経験したからこそなので、私の唯一無二の財産になっています。

こうしてみなさんに一部ですがお伝えすることによって、上辺だけでこうしましょうと言われるままやるのではなく、結局は「自分1人で考えた答えが強い」ということを知っていただきたいんです。

生徒さんにはあなたしかいませんから^^

 

チェックポイント2

「おうちでの練習を習慣づけてもらうこと」

先程の例は極端でしたが、なんと言ってもこれは、楽器を習わせている家庭にとって大事な役割です。

おうちでの生徒さんの様子はこちらから見ることができませんから、レッスン後、連絡ノートなどに宿題のやり方、回数のめやすなどを書いて渡したりして、おうちでのお子さんの練習につきあってもらえるように協力していただくようにしましょう。

生徒さんには、

「レッスン→おうち→レッスン」

のサイクルを身につけてもらうことです。

 

レッスンで先生に教えてもらう
 

おうちで、教えてもらったように弾く            レッスンで、おうちで弾いたのを先生に聞いてもらう。直すところを教えてもらう
 おうちで直すところを練習するレッスンで直したところを聴いてもらう

 合格♪

 

というのが、だいたいのレッスンの流れだと思うのですが、入会したばかりだと小学生でも、おうちで何もしないで来ちゃう子がいます。

これは、何もしたくないのではなく、おうちでも弾くものなんだ、とわからないからです。

スイミングみたいに、その日だけ泳ぐ。みたいな感覚があるのかもしれません。

 

楽器は、レッスンの日だけじゃなくて、おうちでの練習もしないと上達しないんだということを、最初の2ヶ月くらいで導いていきましょう。

幼稚園児には「宿題」という概念がまだわかりません。こういうときはお母さんにも協力していただいて、おうちで弾いてきてもらうことを理解してもらいましょう。

そして、まだこの段階では、生徒さんもこちらもお互いによく知り合っていないので呼吸が合ったレッスンになるまで少々時間が必要です。

予定していたところまで進まなくても、生徒さんが楽しかった!と思えた状態でレッスンを終えられると、翌週のレッスンも楽しみにしてくれます。

生徒さんは楽しく来ている様子でも、こちらはいつでもいろんな方面から観察してこちらのレッスンのレールにうまく乗せて行けるようにしていきましょう。

 

チェックポイント3

「30分というレッスンの長さに慣れる」

小さいお子さんだと、30分おりこうさんにしていられるかしら?とご心配されるお母さんも多いですが、先生もここが腕の見せ所というか、緊張感のある2ヶ月です(笑)

集中力が切れないように、6分くらいのメニューを4つくらいで毎週終われるように、生徒さんにメニュー自体を覚えてもらうと30分の感覚がわかってきます。

あ、このメニューはいつも最後にやるからこれでおしまいだな、とわかります。たまにメニューを入れ替えたり、差し替えたりして、とにかく4つくらいで回すようにして時間の感覚に慣れてもらいます。

もっと大きい生徒さんは、集中力が続かないというよりは、おしゃべりが止められなくて、時間が足りなくなりがちです。

ちょっとした雑談でも大人は切り上げることを知っていますが、子供はわからないんですね^^;

おしゃべりしているとピアノを弾く時間が減っちゃうよ?と言ってもピンとこないお子さんもいます。

しゃべっている間に時間がどれだけ流れているかがまだ把握できないんですよね。

ですから、先生がタイムキーバーになって30分の感覚を身につけてもらうことが大事です。早くレッスンおわんないかなーと時間を気にする子もいましたが(今は時計をレッスン室に置いていません)、おしゃべりな子には、時計を置いてレッスンするといいですよ。

次のお子さんがきてもおしゃべりしている子はしていますからね^^;


ドリルの時間は5分間タイマーにして、よーいどん!でやってもらうなど、集中する方へ気持ちを持って生かせることが大事です。

 

チェックポイント4

レッスンの前後の声かけを積極的に

レッスンスタートしたばかりの生徒さんとの関係は、まだまだこれから構築途中です。


その生徒さんに対するレッスンの実績もないですし、お互いに手応えというのを探っている時期でもあります。

ですから、レッスンノートを作って、その日のレッスン内容や進んだ曲、宿題などを書いて、先生からメッセージを書いてお母さんに渡す。ということをしたり、レッスンの前後、お母さんに「今日はこういうことができました」「こういうところが良くなりましたねー」「おうちではどうですか?」など積極的に声をかけるようにします。

そして、多少の雑談も大事。お天気の話でも、レッスン中にお子さんから聞いたお話しでも、なんでもいいので、お母さんがいつでも先生にお話ししやすい雰囲気を作るようにしましょう。

それほどの反応がなくても、こちら側の誠意としてやる、という風に思っておくと続けられます(笑)

コニュニケーションは積み重ねです。でも、長話は厳禁です^^;「生徒さんが靴を履いている間」くらいの会話を大事にしましょう♪

 

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