個人で音楽教室を運営している場合、当然、経理も自分でやらなくてはいけません。
そこで、なるべく教えることに集中できるように、合理的な納入方法を考えてみましょう。
現金(月謝袋)で納入の場合
今も根強い、現金での納入。
振り込みだととても楽なんですが、他の習い事の謝礼とごっちゃになるので、月謝袋スタイルは多くの生徒さんに支持される方法のようです。
生徒さんに月謝袋を渡し、決められた期日に毎月直接手渡しで納入していただくのが一番多いと思います。
この方法は、例えば会社のお給料日のように、毎月同じ日に一括で納入されることはありません。曜日ごとにいただくので全員分の納入が確認できるまで一週間かかります。正直、管理しにくい方法です。
そしてもちろん、手渡しですから、やむを得ず生徒がお休みだった、とかうっかり持ってくるのを忘れた場合は、翌週に…みたいなことがあったり、人数が増えていくと管理が大変になります。
領収の証明をどうするかという点について考えてみましょう。
「生徒さん側に領収したことへの確認、自分にも確かに預かったという確認」
この双方の証明が必要です。
<生徒さんへの領収の証明>
月謝袋には、領収印と日付を記入する。
もっと厳密にしたければ別に受領書を発行する。
<先生の方で確かに納入済みという証明>
・生徒の名簿を作り、納入日、月謝袋を返した日を毎月記入する。
・月謝袋の端に割り印を押して月謝袋と名簿に日付を書く。
・月謝納入日に未納だった場合は、「未納」と書く。
または、カーボン式の領収書を発行。控えが証明になる。
割り印をする理由は、「未納」であることを証明するためです。
万が一、生徒さんが月謝袋を紛失してしまうと領収を証明するものが生徒さん側にはなくなります。
記憶が曖昧になり、月謝を納入したかしてないかさえもはっきり覚えていない親御さんだったら、どう「未納」であることを証明するか。
こちらで割り印をしてある名簿があれば、確認できます。
割り印をするという一手間を加えることで、管理を徹底していますという管理への信用度を上がります。
その上で、この領収方法を保護者の方に伝え、月謝袋は生徒さんにとって受領書代わりになるのでとても大事なものであること、毎月領収印を確認してもらうこと、月謝袋は紛失しないように入会時にお願いしておきましょう。
信用問題ではありますが、金額が間違いなくあると思い込んで、あとから合わなかったりすることもまれにあります。現金を管理するときは、その都度、金額を確認することが大事です。
生徒さんにも、お金の考え方についてもいろいろな方がいます。みんながみんな、そういったことに細かい方ばかりとは限りません。
だから、お互いに確認しあいましょうという働きかけが大事かなと思います。
現金を直接手渡しということで、この方法が万全とは思いませんが、圧倒的に月謝袋での管理が多いと思うので、可能な限り納入方法は徹底した方がいいです。
次は、口座振替や振り込みの場合について書きますね^^
口座振替、振り込みで納入の場合
本音は、できれば口座振り替えや振り込みだといいですよね。一度で済むし、先ほど書いたような面倒な作業もなくなるし、月謝袋のようにお金の紛失や盗難の心配もないですし。
納入日を例えば月初と決めると、全員分の謝礼が一度にお預かりできます。
すると運用も楽になります。だから口座振替、振り込みの方法が一番理想です。
未納の生徒さんに、「まだのようなんですが…」という、言いにくいことも言わなくて済みますし^^;
▶︎口座振替
毎月決まった日に先生の口座へお月謝を送金してもらう方法です。
銀行から送金手続きの用紙をもらってきてそれを書いてもらって銀行に提出してもらう。生徒さん側に毎月手数料がかかってしまうのがネック。
▶︎振込
直接生徒さんから毎月先生の口座へお月謝を振り込みでもらう方法です。
よく月謝を持たせるのを忘れるお母さん、おうちが遠くて戻って持ってきます、ということが難しい方に合う方法です。
振り込みの場合、生徒さんがネット銀行の口座を持っていると、手数料が無料になる場合が多いので、生徒さんにとっての負担がない代わり、忘れずに振り込んでいただくことが大切。
現代は、キャッシュレス化が加速して、10年前よりも現金を使わずにお支払いする方法が増えました。
ですから、入会時に生徒さんには月謝袋での納入の他に、口座振替、振り込みのご案内もしましょう。
普段、現金での納入でたまたま忘れてしまって生徒さん側から「持っていくのを忘れてしまったのでお振込します」とおっしゃってくれる生徒さんもいますので、現金以外の納入方法もありますよ、というのもお伝えしておく方がいいです。
できれば先生側は、ネット銀行などの口座を1つ用意しておきましょう。
振り込みのお知らせが即時メールで届くので確認しやすくておすすめです。ATMに行かずして即時確認できるのはすごく助かります。
ネット銀行によっては、振り込み手数料が月◯回まで無料といういサービスがあるので、それを利用して貰えば生徒さん側も手数料を負担することなく送金できますからお互い便利ですよね。
生徒さんにもネット銀行の口座解説をご案内するといいですね^^
2020年の緊急事態宣言時は、一時ほとんどの生徒さんに振り込みに切り替えていただきまして、現金以外で納入するハードルが下がったように思います。
月謝納入期日の決定と、延滞の対応
お月謝の納入については、入会のときに渡すレッスン規約にしっかり記載しましょう。
・納入方法
・納入期限
・遅れた場合の対応
当月のお月謝は前月末まで納入していただけるように統一すると理想かな、と思います。
生徒さんにはお月謝は「前納制」とお伝えしておき、「お月謝を納入しないとレッスンは受けられない」という流れを作ることです。
この「前納制」の言葉だけで、滞納したり、当月末まで持ってこない、という事案はほぼゼロになりました。
そうすると、早い方は月の半ばくらいには翌月分を持ってきてくださいます。
でも、ときにはうっかり忘れてしまったり、たまたまレッスンをお休みして翌週になることもあります。仕方ないケースもありますが、始めに納入日を言ってあっても、どうしても遅れる方もいます。
▶︎いつも忘れてしまう生徒さんへの対応
入会して翌月からすでにお忘れになるケースもあります。
はじめが肝心ですし、規約をしっかり読んでいない可能性もあるので納入日に持ってきてくださらなかったらその日のうちにお伝えします。
・前納制であること(月末が納入日)
・その日か、翌週必ず持ってきていただくことをお約束する
実は、それでも翌月になると忘れてしまう方もいます…。実際にいらっしゃいました。一年近く💦
入会翌月から、毎月持ってきてくださらず、毎月その都度LINEやお電話でお伝えしていましたが、翌月やっぱり忘れてしまうんです。
こちらから言わないと持ってこない、言われてから月謝を持っていく日、と認識しているっぽいというレベル。
ちなみに、そのお母さんとの関係は良好で、どうして月謝だけ持ってきてくれないんだろう?と思ってたんですね。
さすがに半年以上もこれではよくないな、とじっくり考えた結果、
こういう方はきっと、家計のお金を毎月用途ごとに振り分けていない方なのではないかと察しました。その都度払いというか。
だから「遅れてますよ」と言われてからお支払いする、ということに抵抗がない方。言われてから持っていけばいいか、とナチュラルに思っている方かな、と。
私たちは毎月お伝えするのは抵抗がありますよね💦
ですから、LINEでまずはお伝えしました。それでだめなら一度来ていただいて直接お話ししようと思っていました。
LINEには、
〜中略〜
たびたびこちらからお伝えするのは大変心苦しいので、納入日をお守りいただけますようご協力お願いいたします。
と送りました。たびたびっていうか、毎月なんですけどね💧
そうしましたら、やっと毎月持ってきてくださるようになりました…!そうか、やっぱりこれかと(笑)
先生の方から言わせてしまうことは、先生には心理的に負担なことである、ということの理解がなかったようなんですね。そこで初めて
おそらくレアケースだと思いますが、こういうこともありますよ、と例でした。
さて、そういうわけで
お月謝を期日までに納入していただくためには、なるべく「滞納」を認めないこと。
ある先生は、2,3ヶ月滞納されたときがあったと聞いたことがあり、結局納めてもらえないままやめてしまったということでした。
先生が未納のお月謝を請求することは、非常に言いにくいことです。急に生々しい感じになるからです。だからできれば言いたくないですよね。
1ヶ月内での話ならまだいいのですが、1ヶ月以上の滞納はNGです。
未納・滞納が発生するのは、頂くべき時に頂かないままレッスンをしてしまうからです。完全に先生の責任です。
とはいっても、生徒さん本人はそういうことはわからないから、毎週通ってきますよね。
もちろんその理由で帰すのは不憫だし、来週まで待とうと結局レッスンしてしまいますよね。
その繰り返しで数ヶ月の滞納が発生してしまうわけです。
いつでもいい、待ってても全然構わないと思っても、きちんと納めてくださる生徒さんに対しても不公平になってしまいますよ。
他の生徒さんと同じように同じときに納入してもらうようにするのも先生の仕事です。
家庭によって、いろいろな事情があるかもしれない、やむを得ない事情があるかもしれない、その考慮はもちろんしたいですがそれも一ヶ月以内のこととしましょう。
翌月にずれ込む前に、きちんと生徒さんと相談して対策を決めることをしないといけません。
数ヶ月の滞納がある場合は、親御さんに教室に来ていただいて再度お約束を確認する、という対応が必要です。
お金にうるさい先生だって思われるのはよくない、汗水流して働いて持ってきていただくお月謝なんだから請求するような真似はできない、とそうお考えの先生もいます。
今の時代、そういう発想は捨てましょう。
私たちも同じように骨身を削ってレッスンしています。
会社で仕事してお給料をもらうのと同じように、私たちは、楽器を教えることで生計を立てています。
お月謝は「もらうべきときにもらう」ようにしましょう。
ですが、普通はですね、何ヶ月も滞納するなんていうことはありえません。
あり得るとしたらそれは、確信犯的な生徒さんです。もうどこかの時点で月謝を納める気がさらさらなくなっちゃって通わせている親御さん。
それまで何度も先生から納めていただくように連絡がいってるはずなんです。それなのに納めないなんて、ありえないでしょう?
「子供にどうしても習わせたい」「お金はないけど、なんとか続けさせたい」
そういう風に言う方もいます。わかるんです、その気持ちも。
でも、それは習いたい方、習わせたいと思っている方みんなが思ってることなんです。
でも、習い事というのは本来、先生へ「謝礼」も、習う時間もある環境にいる人が習えるものなんです。
問題のど真ん中にいると、本質を見失いがちです。
そもそも技術を身につけるのに無料で身につけようなんてあり得ないんです。その本質を理解できない人に教える時間はない、と私は思います。
そう考えると、何かと理由をつけて納入を延ばしているのは、先生の優しい気持ちに甘えた、悪質以外なにものでもありません。
どうしてもという理由があって、先生もそれに対して理解しているのなら、双方がそれでよければいいのですが、それ以外で、こういう方に出会ってしまったら、退会していただくようにしましょう。
これは、規約に月謝の納入方法と、それを守れなければ退会していただくと書いてあり、それに生徒さんが同意しているのが前提です。
規約を守っていただけないのなら退会していただくしかない、守っていただけるなら、今までのお月謝を納入してからレッスン再開しましょうという流れでお話しましょう。
まず、生徒さんのレッスンを一旦ストップして、レッスン日じゃない日に滞納された分のお月謝を持って来ていただく日をお約束します。
レッスンの日に待つとまた納入が延びて、無償レッスンだけが増えます。
月謝の滞納ですごく苦労した経験を持つ先生もけっこういらっしゃるのでどうにかならないものか、とすごく深刻な問題でもあります。
だから、ちょっと辛口に書きました。
ちなみにとある大手楽器店の音楽教室は月謝はすべて口座引き落とし(クレジットカード)です。なぜそうしたかというと、その音楽教室では現金での納入も認めていて、かつては何年も(!!)滞納してた生徒さんがいたケースがあったそうです。
それ以来、その音楽教室では、一ヶ月でも引き落とし出来なかったら自動退会にするという規約を決めたそうです。どんな事情があろうが、もう一度入会手続きしてから再開してもらうんだそうです。
当時聞いた時は、すごいシビアだなーと思いましたが、今となっては当然の対応だと思います。
毎日心をこめてレッスンしているのですから、お金に関してはしっかり管理することが重要です。


