体験レッスンの狙い
ピアノ教室に限らず、これから何か始めようというとき、
「どういう雰囲気の教室なのかな?」
「どんな先生なんだろう?」
「やっていけるかな?」
という人のために、体験レッスンをして、正式に入会するという流れが主流になってきました。
昔は、生徒のお問い合わせがあったら即入会という感じでしたが今は、いろんな教室のレッスンをお試しで受けてから、通いたい教室を決めることができるという点では、習う側も教室を選べるようになったと思います。
習いたいと思う側が教室を選べるようになったということは、
体験レッスンを受けてくれた=必ず入会していただけるとは限らなくなってきました。
ピアノ教室は特に、あちこちと先生を代えて習うものではないので一番初めの先生との「出会い」というのが後に影響しますよね。
それに、やっぱり不安でいっぱいだと思うんです。だからこの「体験レッスン」というものは、これからピアノを始めたいという生徒さんにとっても有益だと思います。
教える側としては、「体験レッスン」はたいてい無償で行っている先生が多いと思うのですが、無償でやるからには、ぜひ入会までつなげたいですよね^^ここでポイントとなるのが、
- 先生は教室のシステムやレッスン内容をいかに魅力的に伝えることができるか?
- 習う側の需要に応えられるポイントがどれだけあるか?
- 「ここで習いたい!」と思ってもらえるような体験レッスンができるか?
- 体験レッスンのメニューのプランを立ててあるか?
ここで発揮するのが、時間をかけて一生懸命考えた「教室理念」です。このアピールなしには、他の教室との差はつかないと言ってもいいくらいです。
「ご入会の案内セット」としてプリントアウトして作っておきます。おうちに持って返っていただけるようにクリアファイルなどに入れてお渡ししましょう。
そして、大事なお子さんをお預かりするので、生徒になるかもしれないお子さんとよくコミュニケーションをとる時間でもあります。
生徒さんにとって体験レッスンは、「一番最初のピアノとの出会い」の場であり、
先生にとっても「運命的な生徒さんとの出会い」の場であります。
そして、めでたく入会していただけるように、体験レッスンでは本レッスンへのレールを敷いてある内容にするのがポイントです。
入会につながる体験レッスンとは
まず、その「ご入会セット」というのは、
- 体験レッスン教材(使いきれなくてもOK。入会後も使用できるようにすると「次へのつながり」ができてbetter。
- レッスン規約(教室理念を表紙に書いてあるといいかもです)
- レッスンコース、レッスンカリキュラム
- 入会申込書
です。体験レッスン当日に、親御さんにお渡しするものとして事前に準備しておきましょう
体験レッスンの時に、いくら顔合わせ、楽しい印象を残すためとはいえ、いつも自分がしてるレッスンと違うことをやってはダメです。これは絶対大事です。
体験レッスンでは、歌ったり、体を動かしたり楽しいことがたくさんあったから入会したのに、入ったら入ったでぜんぜんやらなくなった、では、ギャップを作ってしまいます。けっこうそういう声はあるんですよ^^;
- 自分の子供が楽しんでいるかどうか
- 実際に「体験」できるメニューがあるかどうか
- 先生が自分の子供に愛情を持って接してくれているかどうか
- 先生の雰囲気が好印象かどうか
特に一番上の「お子さんが楽しんでいるかどうか」というのはとってもよく見ています。
ですが、単に「おもしろい!」ではなくて、「これができるようになったから楽しい!」という学びによって得られた満足感を与えることが大事だなと思います。
これが2番目の「実際に体験できるメニューがあるかどうか」にかかっているのですが、リズムうちも、おうたをうたうにしても、そのメニューがその体験レッスンに先生がなんらかの「ゴール」を設定していることが大事です。
私は、「最後は、譜面(譜面らしきもの)を見てピアノを弾いてみる」ということをゴールにしています。
おうちでは譜面がないところで、探り弾きで何かの曲を弾いていた我が子が、指を見ないで譜面の音符を目で追いながら弾いているのを見て、喜んでくださいます。
お子さん自身も、譜面を見ながら弾くという初めての体験に、達成感と満足感そして、「楽しかった!」と言ってくれます^^
そして体験レッスンが終わったら「しゅくだい」を出します。
そうすると、次ここでまたレッスンできるんだ!またここにきたい!というダメ押しの一枚になります^^
以前、体験レッスンを受けてくれたお子さんが、
「他のところの体験レッスンは、何か弾いてみてとか言われただけでそんなに楽しくなかったけど、ここでは左手も教えてくれて、両手で弾けたしすごく楽しかった!」
と、とても的確に言ってくれまして(笑)、なるほどなー!!と思ったんですよね。
そして、お子さんの性格を見ながらレッスンを進めていきますから、声をかけながら、お子さんの今のモチベーションが持続させられるか、など短時間で見せる必要があります。
さらに、複数の教室を巡って最終的にうちに決めてくれた別の生徒さんによると、
「先生(私)だけでした。子供の名前を事前に聞いてくれて、初日に「◯◯くんだね!よろしくね!」って言ってくださったのがすごく嬉しかったです。他の先生ではなく、marble先生がいい、marble先生はいつくるんだとずっと言っていたのでお願いします」
ということでした。
入会=安心ではない
で、そのお母さんは、1、2年経ってから、
「やっぱりmarble先生にお願いして本当に良かったです!これからもよろしくお願いします」
と改めて言われたことがありました。一貫したレッスンの実績を見ていただけたのだと思います。また、別の生徒さんは、
「◯◯(娘さん)の涙をわかってくれるのはmarble先生だけだねー。いつも子供の気持ちも汲んでくださってありがとうございます」
「先生、ずっとうちにきてください。絶対にずっと来てくださいね!!」
と、しばらくしてから念を押されたこともあります(笑)それこそピアノ教室を始めた頃で、実は今もレッスンで伺っている生徒さんで本当に長いおつきあいになっています。
複数体験レッスンを受ける側も、選択肢を増やす分、どこの教室にしようと決めるのが難しくなるのも事実です。
入会を決めてくださるのはほんとにちょっとの差なのかもしれません。
その差が、体験レッスンの内容だったり、先生のお子さんに対する態度だったり、些細な言葉だったり、だと思うんですね。
とはいえ、入会してくださったからといってめでたしめでたしではありません。
だからこそ、誠実な日々のレッスンの積み重ねが大事なのです。
入会後にも満足度を感じる丁寧なレッスンが土台
実際にレッスンが始まったら、信用に足る質の高いレッスンができるかどうか、それを受け入れてもらえるように誠実にコミュニケーションしていけるか、が大事になってきます。
親御さんは、最初の体験レッスンの印象で決めた選択を信じ、期待してくださっています。
それを忘れてはいけません。
生徒さんがこの教室でよかった!と心から思うのは、ずっとあとになってからだということを覚えておいてくださいね^^
だから私たちにできることは、
・入会までの動線がちゃんと示せること(入会セットを作成)
・体験レッスンメニューのプランを立てておくこと
・入会後につながるような体験レッスンメニューを考えること
・自分の教室のレッスンを行う誠実な姿勢とコミュニケーションを心がける
です。
結局は「普段と同じ変わらないレッスンへの姿勢が重要」ということです。そこからいい体験レッスンメニューが生まれると思います。
ちなみに私が実際に生徒さんのお母さんから聞いた「とんでも体験レッスン」も書いておきますね。
「先生がだだーっとピアノを弾いて、はい、マネして弾いてみて」といきなり言われた。
「ここが真ん中のドだよ」といって子供の指を強引に鍵盤に持っていて弾かせて子供が困惑していた。
先生のキャラが濃くって、話し方も変わっていて、コミュニケーションを取るのがが難しそうと感じた。
「知っている曲を一緒に歌おう」といってアンパンマンを弾いてくれたけど、お子さんはつまらなくなって床に寝っ転がってしまった。
床に寝っ転がってしまうのは、「つまんない」の最大のサイン。ふだんどんなレッスンをしているんだと疑うレベル。
もしかしてとても質の高いレッスンをしているのかもしれませんが、それが体験レッスンにリンクできていない例です。入ってくれると思い込んで、体験レッスンを軽視しているのが透けて見えます。
こんなふうに体験レッスンをノープランでされているピアノの先生は、今もまっだまだいらっしゃいます。
だから、体験レッスンの準備はしっかししておいた方が、選ばられる候補としてランクアップできるんです。
さて、前回このコンテンツを公開した時に、私が使っている体験レッスン教材のサンプルを特典としてプレゼントしたんですね。それを使っていただく先生方が多くて、「とても使いやすかったです!」「なくてはならないものになりました!」と好評をいただきました。
それから10年さらに体験レッスンを重ねて、その頃よりもバージョンアップした体験レッスン教材ができました。興味がある方はどうぞ♫
体験レッスン有料化
体験レッスンというのは、短い時間の中で自分の教室のポリシー、レッスンの雰囲気、レッスンの内容、初めてピアノに触る生徒さんに「楽しいんだよ!」という体験してもらって「習いたい」という気持ちの芽を伸ばしてもらうことにその目的があります。
ということは、「体験」とは言っても、初回からそれなりの完成度のあるレッスン内容を提供する必要があります。
体験レッスン教材を作って、レッスンプランをたてて、教室案内や、レッスン規約などの準備も必要ですよね。「ご入会案内セット」の経費なんかは完全に先生の負担ですし。
すると、無料ですることは当然、1レッスン分のマイナスが発生します。単発の1レッスンと遜色ない内容となるので。
そこで、思い切って「有料」で体験レッスンをするという方法もあります。といっても、1レッスン分の料金をいただくのではなくて、「前金」みたいなリーズナブルな設定でもいいと思います。
めでたく入会となったときにお返しする、というシステムにすれば入会する側にとっても安心です。そして、これは「体験レッスン荒らし」の防止策にもなります。
近頃は、体験レッスンだけを(そもそも入会する気はない人)受ける人もいるようです。
こちらからしたら冷やかし以外の何者でもないですよね。体験レッスンのハシゴをしてピアノを弾けるようになろう、という輩もいるとかいないとか…。
「体験レッスン」を提供している限り仕方のないことですが、中にはもちろん習う気は満々なんだけれど「できるだけ多くの教室の体験レッスンを受けてから決めたい」という方もいます。何ヶ月もかけながら。
私などは、早く決めてレッスンを始めた方が、テキストも何曲か進んでるだろうに…と思うのですが^^;
そこまでなってくると、いくら比較対象といっても、ほぼほぼ「ここ!」って決まっているのに、本当にそれでいいか手当たり次第体験を受けて「やっぱりここだった!と確かめるために」という目的で体験を申し込む場合。
そうなると、「消化試合」みたいな感じに体験を受けられるのも嫌ですよね。
これからはそういった方も多くなってくると思うので、問い合わせする際の注意事項として、明記しておく必要が出てくるかもしれません。
こちらは無料でレッスンの一枠を使ってその人のために提供しているのですから、そういった自分のメリットだけを考えるような方々のためにレッスンをするのでは、時間と労力の無駄になります。
もしそういう対策が必要なら、有料化でターゲットを絞る方法も考えるべきだと思います。


