①将来を見据えた仕事のしかた

未曾有の出来事の前と後

私は宮城県に住んでいますから、311を経験した身として、ピアノ教室運営について考えさせられたことを書きますね。それに加えて現在はコロナ禍でもありますから、それも踏まえて書きます。

 

個人でピアノ教室を運営するという仕事は、お給料をもらう会社員と比べても非常に不安定な職種と言えると思います。

 

311の震災を経験した者の実感として、その不安定さは増したと私は感じています。さらにコロナ禍となってから特にですね。

 

会社自体が津波にさらわれて、職を失ってしまうというようなこれまで考えられなかった災害が本当に起こるんだ、ということを見せつけられました。

 

コロナで飲食店が閉店してしまった事実も今起こっています。

 

日本、または世界規模で非常事態に陥った時、人は生きることに、復興に、安全、健康を守るためことを最優先し、それに精一杯となります。

 

音楽とは文化です。

 

現代社会では、まずは最低限の生活が保障されて、その中でもう一つ生活に彩りを持ちたい、たくさんの趣味の選択肢の一つとして音楽を楽しみたい感情が湧いてくるわけです。

 

そのときに必要とされるのが私たちのような「楽器を教える」ピアノ講師であったりします。

 

私は、被災して一番先に感じたことは、

 

「もう音楽どころではない。こんな状況では楽器を習いたいなんていう人なんか当分いないだろう。もうこの仕事はできないかもしれない」

 

「放射線で汚染されて、ここから離れなくてはいけないかもしれない(家族と一時そんな話にまでなりました)。そしたら、どうやって生きていけばいいんだろう」

 

という不安でした。私自身もあの甚大な被害を見て、ピアノを弾こうという心情には到底思えなかったので余計強く感じました。

 

これまで私の生活はピアノを教えることで支えられてきました。

その支えがこの先なくなるかもしれない。私はこの先どうやって生きて行こうか…。

 

コロナ禍に突入した時は、

「もう対面レッスンなんていうスタイルは、贅沢なことになってしまうのかもしれない」

 

「楽器の習得は、もはや画面越しで覚えるもの、というのがスタンダードになってしまうのかもしれない」

 

「ネットをうまく使わないと、この仕事をやめる先生も出てくるかもしれない」


なんていうことが、頭を思いっきりよぎりました。

 

311の時は、実際にレッスン再開の目処が立たずに、ただただ毎日を過ごす日々で結局一ヶ月は「無職」状態で、「やることがない」、という心情を初めて経験しました。

 

もし生徒さんのが一気に退会してしまったら、自分の教室がすべての私には生活を支えるものが何もなくなってしまいます。この擬似体験を1ヶ月強いられました。

 

このままではいけない。

 

震災後、新入会された生徒さんがおっしゃっていました。

 

「こんなときだからピアノを弾いて辛い現実を少しでも忘れたい」

 

と来てくださった生徒さんの言葉に、音楽の力の大きさと同時に衝撃を受けました。

 

こういう動機で入会された生徒さんなんて今までいなかったからです。

 

全てが変わってしまった、とつくづく感じました。私は、それでますます、311前と同じ気持ちで運営してはいけないと思いました。

 

長い将来を考えた教室運営を考えるべきじゃないのかな?と思い始めました。

 

不安定さを解消できるような、ピアノ講師としてできることを考えよう。

 

そのためには、楽器ができることを生かして、音楽をしたい人を求めて活動範囲を広げることも大事なことだと思うようになりました。

 

自分を生かせる場が他にもあれば、不安定さをカバーするものともなるからです。

 

この仕事で生きて行くにはもっとやるべきこと、やれることがあると感じます

 

そもそも、個人のピアノの先生は、どこにも縛られない自由の身なのですから、いろんなことを自由にやることができるし、やっていいんです^^

 

仕事の幅ももっと増やしてもいける、という発想に10年前に切り替えました。

 

だから、私はピアノ教室の集客には実はあんまり固執していないんです。同じところに縛られると、自分の将来の可能性を狭めてしまう気がして。

 

今の日本で311のような災害がどこで起こってもおかしくありません。コロナだっていつ終息するかわからないですし、甚大な自然災害も今日本のどこだって起こりうるという実感は、私たちは10年前より強くなりましたよね。

 

教室運営をもっと発展させていく時期に誰もが来ている、そう感じています。


 

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