⑥大人の生徒さんへのコミュニケーション

大人のピアノコースがある場合、大人の生徒さんとの対応でやはり考えることがいろいろあります。

基本的に、子供よりも言葉が伝わりやすいし、理解もしてくれます。何より、親を通じで習う子供さんと違って、本人の意思で習いたいといらっしゃるので、基本的な目的意識ははっきりしているので指導しやすいところがあります。

ただ、子供さんへのレッスンとはまたちがう気配りをしないといけないのが大人のレッスンです。ここでは、大人のレッスンについての注意点をあげます。

 

生徒さんを尊重する

子供よりも、大人の方がデリケートです。

大人はその人生の中でたいていのことは経験してきて、何でもできるのが大人です。

その大人の方が「初めて」何かを習うとなると、その分野に関して「何も知らない」自分というのを非常に下に置いてしまって、言い方を変えると「恥ずかしい」とさえ思ってしまうんです。

裸にされたような気分で、というか。そういった勇気も持って、新しく習ってみようと思うのです。

だけど、プライドもある。何も知らないといって、上からビシビシと言われるとプライドが傷つき、楽しむどころではなくなります。

生徒さんが年上でも下でも、同じ大人として尊重し、敬う気持ちで接しましょう。

 

できたことの達成感を確認し合う

大人は、なんでもできるから大人です。

子供は、成長の度合いによって、「できなかったものができた!」を大人よりもたくさん経験します。

ですが、大人になると「できなかったものができた!」という数が少なくなり、感動する場面も少なくなります。

それに大人は、数年すれば進学していくように身の回りの生活環境が劇的に変わっていくわけではありません。

ご結婚されているなら、主婦業、子育て、仕事の繰り返しの中で生活しています。

自分も家庭も支えている立派な大人です。それは当たり前とさえ思っていますよね。

だから、大人は自分自身の成長にはあまり意識してないんです。

どちらかというと「できない」ということばかりにフォーカスしているというか。

そこで、できたことに関しては、ことさらすごいこととして認めてほめるように心がけるといいと思います。

「大人になってから、こういうことができたと経験できる喜び」

 

「こんな経験ができることは、すばしいことなんだ」

と、知っていただきましょう^^


大人の生徒さんが、目に見えて自分でも上達していくことへ意識を持てるようになれば、向上心ももっと生まれると思うのです。

そして、レッスンの方向性としては、「ポジティブなレッスン、ポジティブな言葉を心がける」ことです^^

 

 

言葉遣い

一番気にした方がいい点と言ってもいいでしょう。

小さい頃、習った経験がある方ならまだしも、大人になって初めて習った方にとって、レッスンで飛ぶ先生の言葉は、私たちの中では普通でも、生徒さんにとっては傷つけてしまったり、ショックを与えてしまうこともあります。

子供さんのレッスン以上に、言葉のチョイスには気を配ってください。ふだんから言い回しを考えておくことも大切です。

いくつか、言葉の言い換え例をあげておきます。

 

 

言葉の言い換え例
  • もう少し練習しましょう。→お時間があるときに弾き込みしたらもっとよくなりそうです。
  • 音が少し乱暴な感じです。→タッチを少しこうすると、音がもっと伸びのあるいい音になります。
  • テンポが揺れてます。→一定のテンポの中でコントロールできると演奏が安定します。
  • 体を揺らしすぎないようにしましょう。→姿勢を安定させた方が音もきれいになります。
  • レッスンの最後 → すごくよくなりました。お疲れ様でした。


子供さんのレッスンでもそうですが、ついダメなところに耳を傾けてしまう私たちですが、まず「よかったところ」をほめて、そのあとに改善点を気分を害さないように導きましょう。


大人の生徒さんは、たいてい「楽しんで続く限り続けたい」という基本的な願望があります。

でも講師からしたら、もっとここをこう、いやこうじゃなくて、と生徒さんができるからこそ期待してしまいますよね。


人によっては、まったく曲になってないから(汗)、もっと弾けるようにしてあげたい、という気持ちとわかってるけどこれが限界という生徒さん側で軋轢を生んでしまいます。

大人の生徒さんの場合、何を目指すかによって指導が変わってきます。その生徒さんは、どの程度のレベルを目指しているかはじめに聞いておきましょう。

止まらないで弾きたい、とおっしゃったら、そのためにはこのくらいの練習量が必要ということをわかっていただく、そして、それができるかどうかコミュニケーションをとる中で探っていく、という細やかな配慮は必要だと思います。

生徒さんの向上心をほどよく煽りつつ、それが生徒さんの楽しみとなるように導くテクニックが必要かなと思います。

 

雑談の限度

大人の生徒さんは、週に一回、ピアノを弾いていつもと違う日常に身をおいて、自分を高める、それに先生との会話も非常に刺激になったりするようです。拠り所というのでしょうか。

でも、こちらとしては、肝心のピアノを上達させるために存在していると考えている私たちにとって、雑談は、集中力をそいだり、上達が見込めないと心配になります。

ですが、ある程度は許してあげる度量でもって「大人の音楽教室」を開講しましょう。

ただ、「度が過ぎる」雑談を炸裂する生徒さんも中にはいらっしゃいます(汗)

レッスン時間よりも長くなっちゃうと本末転倒ですね。なるべく、レッスンの時間はレッスンに集中していただく。そのあとはちょっとおしゃべりを楽しむという具合に、メリハリをつけたレッスン運びにしましょう。


 

要望とわがままは違います

大人の生徒さんは、弾きたい曲、できるようになりたいものなどの目的がだいたい決まっています。

レッスンを受けるうちに、その目的が「無理かも」と思った時点でじゃあこうしたい、こういうのを弾いてみたい、などリクエスト、願望、要望を言われたりします。

その過程で、先生とフレンドリーになってきてそれが要望ではなくて単なる「わがまま」になったりすると先生は大変です。

何かの曲や、過程でつまづいたら、次の手というのを生徒さんの先に回って考えておきましょう。

知り合いの先生で、大人のグループレッスンで、お一人の生徒さんのなにげない一言で、別の生徒さんがキレて、レッスンが崩壊したと聞いたことがあります。

和やかな雰囲気の中で、生徒さんを尊重しつつも、レッスンの手綱を握っているのは自分(先生)だということを改めて覚えておきたいことです。

 

メールやLINEではレッスンしない

レッスン外でのお話。急なレッスンの変更が必要になったり、お休みするときの窓口として、連絡先の交換をしますよね。

それ以外で連絡過多の生徒さんも中にはいらっしゃるようで…。

レッスンを受けた後の質問、練習の仕方、中には演奏した動画まで送ってきてアドバイスを求めるというパターンもあります。

そういうアフターフォローのサービスを受け付けている先生ならいいのですが、先生の時間を奪っている、ということに気づかずに暴走してしまう生徒さんもいるので気をつけましょう。

基本的に、レッスンに関することはレッスン時間内で完結させる。


これが鉄則です。わからないことがあったら、次回のレッスンで聞けばいいだけのことですし。

大人の音楽教室の先生は、こういった大人の生徒さんならではのお悩みが多いようですので書いてみました。

 

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