これを読んでくださっているピアノの先生もすでに実践されている方も多いと思うのですが、レッスンではお子さんの「想像力」というのを大切にしていらっしゃると思います。
先生が身振り手振り、そしてなるべく「キラキラと輝くような言葉」を使った話術で生徒さんのイマジネーションを増幅させる会話術をされているのではないでしょうか?
私はそれを「立体会話術」と呼んでいます。
言葉のチョイスを磨く
私は児童心理など勉強したわけでもなく、専門の勉強をしたわけでもない、ただただ自分の経験側でしか語れないピアノ講師ですが、長いピアノ教室運営の中で考え続けていることがあります。
「子供の心をつかむには何が大事か?」ということを考えた時、それは
「子供の心に響く言い回し」ができるかどうか
ではないかと思うんですね。
子供って、想像力が半端じゃありませんよね^^
ドリルで音符1つ書くときも、その音符の形からいろいろ話を展開させていきますよね。
また、テキストの挿絵を見て、ストーリーを一緒に考え始めるととめどなくイメージが湧いて止まらなくなりませんか?
子供の想像力をレッスンに生かします。
例えば、ワークで音符に色を塗るページがあったとします。
「このおんぷに赤色を塗ろうね」と言いますよね。小さい子は色塗りを全部きれいに塗り切ることが難しいときもあります。
そんなときは、「全部赤くぬるんだよ」と言っても、「全部」という言葉が抽象的なんです。
「しろいところがなくなるまで塗ってね」というと、塗り残したところまでしっかり塗ってくれます。
頭の中に映像が浮かぶくらい具体的な言葉に置き換えることが大事です。
または、ピアノのレッスンで、中央ドに両手の1の指をおいたポジションの曲があったとします。
理想は、右手ドレミファソ 左手ドシラソファ と置いたまま目線は譜面を追いながら弾くことが理想です。そうしないと譜面ではなく手ばかりを見て弾いてしまうので。
「ドレミファソ、ドシラソファに指をおこうね」と言っても、本人は置いているつもりでいます。
でもだんだん弾いていくうちにポジションがずれていってしまいます。もはや中央ドには指が置かれていない状態に。
白鍵をひとつのお部屋だと説明して、「ひとつのおへやにひとつのゆびをおくよ。ふたつ指を置いちゃうと、じゃまじゃまーっ!てなるよね」
と言うとそれが生徒さんにウケて、目がキラキラし始めます。
そうすると、生徒さんは右手左手一本ずつ、鍵盤に正しく置く動作ができます。
「あ、じゃまじゃまーってなってないね!じょうず!」
と生徒さん自身も今自分がどう指を置いているのか自覚できます。
子供は具体的なイメージに置き換えた言い方にすると、頭の中で物語を作り始めてくれます。
弾いている間に、片方の手が離れたりずれたりする場合は、
「ずっと真ん中のドにおいたままにしておくんだよ」
ではなくて、
「あれ。左手さんたちお部屋にいたのに、遊びに行っちゃっていないじゃん!たいへん!遊びに行かないようにお部屋にいてね」
というと、使わない方の手の置き方に意識を向けてくれます。
もうひとつ(笑)レッスンを始めたばかりの生徒さんで、じっと椅子に座ってられない、挙げ句の果てに「飽きちゃった」と言う生徒さんがいました。そこで、
「じゃあ、ディズニーのプリンセスになろう。そしてね、プリンセスはこう座るんだよ」
と私がいかにも長いドレスを着たプリンセスかの如く(笑)綺麗に座って手を膝においてみます。それからふわっと両腕をピアニストのように鍵盤に置きます。
「で、プリンセスは座り方もすてきだからこのまま10数えてもからだがゆらゆらしないんだよ。すごいねぇ」
といって、本人にやってもらうと、ちゃんと真似をします。
そしてプリンセスになったがごとく手先をやわらかくしてすっと鍵盤に手を置けました。そして、そのまま10数えてみたらもちろんできました(笑)
翌週から「プリンセスごっこ、30かぞえられるから!!」と座る練習を何度もしたがるようになりました。
「じっと座ること」が疲れる、飽きる動作ではなくて「素敵なことなんだ!」というふうに格上げできました。
もし、男の子なら、
「炭治郎が禰豆子をしょってぐらぐらしてたら禰豆子おっこちちゃってどーんってなるよ」
といって座る練習を促すかもしれません(笑)
と、格別すごいことではなくて恥ずかしいですが(汗)とにかく、子供が喜ぶ言葉の使い方は私は昔から得意で、親戚の子たちなども数々虜にしてきました(笑)
注目をして欲しいときは、言葉を「セリフ」のように言い、擬音やオノマトペをふんだんにちりばめて、立体的な会話を心がけます。
面白い言い方をしてくれる先生というのは、生徒さんから好かれます(笑)今度は何を言ってくれるんだろう!?わくわく、みたいな。
たまたまですけど、職業に生かされていると思いますし、とにかくレッスン中は生徒さんのイマジネーションを広げ始めたら気の済むまで語ってもらって、曲に反映させる、という方法でレッスンしています。
生徒さんも気持ちよく語ると心が満たされて、先生に肯定されていると感じますから、レッスンもうまくまわっていきます。
特別なことをしているわけではありませんが、おうちで「ピアノたのしかった」「はやくピアノ行きたい」と言ってすごく練習していますということをお母さんから伺うと、目の前にあるテキストひとつで先生と生徒さんがどのくらい言葉を行き交わせて、関係を作っていくことって大きいんだなと感じます。
ほんの一例でしたが、参考になれば^^
リアクションを大きく
これは、私がピアノ教室を始めたばかりの時から現在もお世話になっている生徒さんの話です。
私は、この出会いが今後のピアノの先生としてこうありたいと思ったきっかけになりました。
初めてその生徒さんのお宅に伺った時、お子さんたちがめちゃめちゃかわいくて、玄関を開けた途端に
「せんせいー!!ピアノのせんせいだー!こんにちはー!!」
とだだだーっと走ってきて、初対面なのに、すごくにっこにこで出迎えてくれました。
天真爛漫、子どもらしい子どもというか、ある意味衝撃を受けました。
表情も明るく、リアクションがはっきりしていて、素直なお子さんたちで、どうしたらこんなふうにかわいらしく育つのかしら?と思いました^^
小一時間体験レッスンをしてわかりました。お母さんのお子さんへの接し方がすばらしかったんです。
「ママー、みてみて、これおもしろいよ!」というようなことを言うと、
「うっわー!おもしろそう!いいなー。よかったねぇ!!」と、(テキストで再現できないのがもどかしいですが笑)そういうリアクションを受けたあとのお子さんたちの顔がキラキラしていて、すごくコミュニケーションの取り方がお上手だったんです。
子供の感情のテンションに合わせて反応してあげるお母さんでした。びっくりしたとき、かなしいとき、その感情に合った言い方、声の大きさ、ほんとうにお上手ですごく勉強になったんですね。
「ママ、せんせいのおようふくすごくきれいー!」
「ほんとだぁー!すごくすてきだよねー^^」
本当に思っているように返してあげて、必ず暖かい表情でお子さんの発言を拾ってあげるんです。帰りに、
「せんせい!きょうはピアノのほんもってきてくれてありがとう!!」
と当時3歳になったばかりの男の子に言われたときはひっくり返りそうになりました(笑)
先ほどの立体感のある会話スキルに加えて、このお母さんのお子さんに対する接し方を参考にしています。
今もそれは生きています。
大きなリアクションは、感情表現の現れです。まさに楽器の演奏には必要な感性ではないでしょうか^^
感情が乏しいと気持ちがあってもピアノの演奏になかなか反映されませんよね。
感情のリミッターを私自ら外すことによって、生徒さんもオープンになります。
だから、レッスンで生徒さんが話すことには
「え!!!たいへんじゃん!」
「うわー!!いいないいなー!」
「すごい上手になってるよーー!」
とか大げさなくらいにリアクションすると、生徒さんは目をまるくして表情がぱーっと明るくなります。
「先生にわかってもらえた!」
「先生もよろこんでくれた!」
「そんなにうまくできたんだ!」
と思ってもらえて、もっとがんばる!と生徒を前向きにしてくれるような気がします。
小さい生徒さん相手には、毎日こうなのでへっとへとですが(汗)、長い付き合いになった時の信頼関係は強いものになるなと思います。


